乳癌は術後の過ごし方も大切!生活の質を落とさないためのケアとは
乳がんが見つかることを恐れる女性はとても多いものですが、実は乳がんって、初期なら手術によって高い確率で治癒させることが可能な病気なんです。
このように、乳がんの基本的な治療方法は手術ですが、手術したあとにもリハビリを続けたり、検診を欠かさないようにしたりするなど、気を付ける点はたくさんあります。
つまり、乳癌とは、一度かかったら手術治療後も長く付き合っていくことになる病気です。再発を防ぐためにも、術後どのようなことに注意すればよいのかをご紹介します。
乳がん手術後の傷跡はどうなる?目立たなくさせるためのコツ
乳がん手術をするにあたって、術後のバストにどんな傷がついてしまうのかがとても気になる女性も少なくないでしょう。そこで、まずは乳がん手術後の傷跡についてお話していきます。
乳がん手術後のバスト
乳がん手術には乳房切除術・乳房温存術・乳房再建手術の3種類があり、それぞれ傷跡は異なります。
しかし、どの手術法でも、大きさや場所が違うだけであって、切った後の経過は同じです。
手術直後は傷跡が赤く腫れて、痛みや熱を持つ炎症反応が起きます。しかし、次第に赤味や腫れが治まり、瘢痕(はんこん)と呼ばれる白っぽい線が出てきます。この瘢痕は、徐々に薄くなってはいきますが、完全に消え去ることはありません。
医療用テープでさらに傷跡を目立たせない!
このように、近年は乳がん手術においても目立つ傷跡が残りにくい手法で手術が行われるので、生々しい傷跡がずっと残るのではないかという不安を持っていた方も、ご安心ください。
さらに、できる限り傷跡を残さないようにするために、医療用テープを使用することをおすすめします。傷口がふさがった後も医療用テープを貼り続けることで、傷への刺激を防ぐことができるため、より美しく治せるのです。
医師や看護師からテープをすすめられることも多いですが、何も言われなければ自分から尋ねてみてもよいでしょう。
テープは、直接、傷跡すべてを覆うように貼ります。3cmほどに切ったテープを、傷跡に平行ではなく直角に、少しずつ重ねながら貼っていきます。3か月を目安に、2~3日に一度くらいのペースで交換していきましょう。
形成外科での治療も可能!
テープを貼ることで、乳がん手術後の傷跡を最大限きれいに治せることをお伝えしましたが、体質によってはかぶれや痒みなどが起きてしまい、テープが使えない人もいます。また、傷跡が化膿したり、盛り上がったりしてしまうなど、きれいに治らないケースもあり得ます。
傷跡が気になってしまうときは、遠慮なく主治医に相談してみましょう。目立たせなくするための対策を教えてもらえます。そんな対策として、形成外科での治療が挙げられます。
先にご紹介した医療用テープもそのうちのひとつなのですが、他にもレーザー治療などいろんな方法がありますので、傷跡が不安な方は事前に相談しておくとよいでしょう。
医療用テープを貼っておくことで、傷跡をさらにきれいに治せるなんて、ぜひ手術前に知っておきたい情報だね!
入院中から始めよう!乳がん手術後の体調とリハビリについて解説!
傷跡についてお話しましたが、術後は腕や脇の痛みなどで傷跡どころではないという方もいらっしゃるかもしれません。そこで、乳がん手術後の体調やリハビリについてもあらかじめ知っておくと、助かることもあるはずです。
ここからは、乳がん手術後に起こり得る体調の変化とリハビリについてお話します。
乳がん手術後に不便を感じるとき
乳がん手術は、乳房の一部または片側全部や、脇周辺のリンパ節を切除するケースが多いです。なので、バストなどの切除部分に傷ができることや、切除部分が痛むであろうことは予想がつきやすいですよね。
しかし、もう少し詳しく見てみると、胸や脇の下の筋肉や皮膚が縮むため、腕や脇、肩などのひきつれ感、動かしにくさなどを感じる女性も多いです。それによって、乳がん手術後には以下のような状況で不便や違和感を覚えがちです。
- 食事をするとき
- 洗顔、歯磨きをするとき
- 着替えるとき、ブラを着用するとき
- 髪を洗う時、髪を整えるとき
- 背中や身体を洗う時
このように、腕を使う動作に痛みや違和感、不便さを覚えるケースが多いです。
しかし、痛みや違和感があるからといってあまり動かさないようにしていると、どんどん動かせる範囲が狭まってしまいます。
退院後の生活をスムーズにするためにも、入院中から意識して腕や肩などを動かすようにしていきましょう。
手術直後からできるリハビリ
術後の状況は人それぞれですので医師の指示に従うのが大前提ですが、一般的に手術直後からでもリハビリを開始するとよいと言われています。そこで、ベッドの上でもできるリハビリをご紹介します。
まずは、一番負担の少ない、手指だけで行うリハビリです。
②柔らかいボールを握る
③指を順番に一本ずつ折り曲げて、また開く
次は、肘を曲げ伸ばすリハビリです。
★図作成中★
②肩は動かさず、肘の関節だけを曲げたり伸ばしたりする
③腕が疲れたら枕の上に乗せて休む
できそうならば、指先やひじに加えて腕全体のリハビリもやってみましょう。
★図作成中★
②斜め上方向に引き上げる
どのリハビリも、回数や行うタイミングなどは無理のない範囲でかまいません。医師と相談しながら続けていきましょう。
入院中~退院後のリハビリ
人によっては、手術時に血液やリンパ液を排出するためのドレーンを脇から入れることもあります。先にご紹介したリハビリは、ドレーンが入っていてもできるものですが、ここからはドレーンが抜けてから退院するまで、そして退院後も続けていけるものをご紹介します。
肩から腕を動かすリハビリです。
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②上半身を少し前に倒し、両腕を前後左右に振る
もうひとつ、バスタオルを使ったリハビリをご紹介します。脇や肩のスムーズな動きを目指します。★図作成中★
②手術した側の腕をできるだけ上まで伸ばし、バスタオルで背中を拭くように動かす
これらのリハビリについても、やはり医師の指示に従いながら無理なく行っていきましょう。
でも、違和感に負けずにできるだけ動かすようにするのが大切で、手術の後すぐにリハビリを始めてもいいんですね!
乳がんの手術って大変なことだというイメージでしたけど、大事にしすぎるとかえって回復が遅れることにもつながるというのは勉強になりました。
乳がんの治療後に多いリンパ浮腫への対策とは?
手術や放射線治療などの影響で、乳がんの治療中や治療後にリンパ浮腫(むくみ)を訴える女性が少なくありません。それを予防するための対策もいろいろありますので、これについてあらかじめ知っておくと安心です。
リンパ浮腫の初期症状
乳がんにおけるリンパ浮腫は、主に乳がん手術や治療をしたのと同じ側の腕や手がむくんでしまうものです。片腕がパンパンに膨らんでしまうケースもあり、なかなか辛いものですので、以下のような初期症状が出てきたら注意しましょう。
- 手や腕、肩がだるい、重苦しい
- 背中や胸、肩が腫れぼったい感じがする
- 服の袖や時計、指輪などがきつい
- 腕などがチクチクするような軽い痛みがある
リンパ浮腫は治療中や手術のすぐあとに起きることが多いですが、中には術後10年以上経ってから生じることもありますので、長い目で見ていきましょう。
リンパ浮腫の予防法
リンパ浮腫にならないよう、手術後からできる対策があります。病院でよく用いられる方法は、弾性着衣を手や足に着用して圧迫するというものです。
また、皮膚の炎症がリンパ浮腫のきっかけや悪化の要因となりやすいので、以下の点に注意することも有効な予防法です。
- 保湿をする
- 爪を短く清潔に保つ
- 虫刺されや日焼けに気を付ける
- 脱毛はカミソリではなく電気シェーバーを使う
ひどくなってしまうと日常生活に支障をきたすケースもありますので、予防に努めることが大切です。
リンパ浮腫の治療法
気を付けていてもリンパ浮腫を起こしてしまうこともあります。そんなときのために、以下のような治療方法があります。
- 弾性着衣をつける
- 用手的(ようしゅてき)リンパドレナージ
- 圧迫下の運動療法
弾性着衣は、予防だけでなくリンパ浮腫になってからの治療にも用いられる効果的な方法です。また、手を使ったリンパ浮腫専門のリンパドレナージや、運動も治療法のひとつです。
リンパドレナージはエステなんかでも普通にやっている施術だけど、乳がん後のリンパ浮腫に対して行う用手的リンパドレナージは、それとはまた別みたい。だから、独断でエステとかに行っちゃダメなんだって!
日常生活での注意点とは?乳がんとうまく付き合っていくために
すでにお伝えしたように、乳がんは手術して治ってからも末永く付き合っていかなくてはならない病気です。退院して元の日常生活に戻っていく中で、どのような点に注意しておけばよいのでしょうか?
検診は医師の指示通りに受けよう!
まず、もっとも重要なこととして、治癒したあとも定期的に乳がん検診を受け続ける必要があります。
再発や転移を予防するため、また、万が一そうなっても再び治療しやすくするために、気になる症状がなくても必ず検診を受けるようにしてください。乳がん検診についてはこちらの記事も参考になりますよ!
日常生活の中での注意点
退院してからは、できるだけ早く元の生活に戻ることが大切です。無理をする必要は決してありませんが、安静にしすぎると術後の機能回復が遅れがちになりますのでご注意ください。
- 家事や身の回りのことは、できるだけ普段通りに行う
- 重いものは持たないようにする
- 車や自転車の運転は腕がじゅうぶん回復してからにする
- 薬物治療中や放射線治療中は妊娠しないようにする
- 適度な運動を心がけ、肥満にならないよう気を付ける
- 禁煙する
乳がん手術を行っても、退院する時点で身の回りのことはできるくらいまでに回復しています。
家事やお風呂などの動作そのものがリハビリにもなりますので、できるだけ普段通りにやりましょう。
ただし、重いものはリンパ浮腫の原因になるので、持たない方がよいでしょう。
また、車や自転車の運転については、腕の痛みなどが残っていると危険です。地域によっては車がないと生活できないこともあるでしょうが、タクシーを利用するなどして、運転に関しては慎重に再開してください。
性生活は退院後すぐでも問題ありませんが、ホルモン治療や抗がん剤、放射線治療などをやっている間は妊娠しないようにする必要があります。妊娠を望む場合は医師に相談してください。
仕事復帰も可能!
体調に不安がなくなり、治療や通院に支障がなければ、仕事復帰も可能になります。
復帰のタイミングは、職種や体質、腋窩リンパ節郭清を行っているか等の術式、切除の範囲、術後に放射線治療や薬物治療を行うかなどによっても異なりますが、早ければ術後1~2週間、遅くとも1~2か月くらいから仕事復帰をする人が多いようです。
仕事をして収入を得ることや、社会とつながるということは、精神的な回復にも大変有効です。
乳がんと診断されると、仕事を辞めなければならないのではないかと思い詰めてしまう女性もいらっしゃいますが、乳がんは術後の制限がとても少ない病気であり、仕事を続けることもじゅうぶん可能です。ですから、一時の気持ちで退職してしまわないことが大切です。
それから、できるだけ普段通りに家事や身の回りのことをやるのが、回復につながるんですね。仕事にも意外とすぐ復帰する女性もいるみたいで、希望が持てますね!
でも、運転や喫煙など、気をつけなきゃいけないことについてもちゃんと知っておくことが大切ですね。
退院後も検診や通院が必要になるけど、たとえば放射線治療は5~6週間で、一回につき10分程度だから、その時間だけ仕事を抜けさせてもらって治療と仕事を両立している女性もいるわ。
遠慮せず職場に相談して、無理なく社会復帰する道を探ってみるといいわよ!
乳がん手術後に起こり得ることを知り、上手に病気と向き合おう!
乳がんを宣告されると、手術の恐怖で頭がいっぱいになってしまう方もいらっしゃるかもしれません。それも無理のないことですが、術後はどうなるかということについても術前に知って準備しておくことで、見通しが立ち、気持ちも前向きになれるはずです。
手のリハビリなら術後1日目から始めることができますし、退院する頃には自分の身の回りのことは一通りできる状態になっています。もちろん個人差はありますので無理は禁物ですが、意識的に腕や肩を動かすことを心がけましょう。
また、日常生活を取り戻せたあとも、定期的なセルフチェックと乳がん検診は欠かせません。医師の指示を守って、うまく乳がんと向き合っていきましょう。
乳がん手術後の人生をより良いものにするためには、術後のリハビリや、できるだけ早く病気になる前の生活に戻すこと、リンパ浮腫への予防対策など、事前に情報を集めて術後すぐに実践できるようにしておくことが大切よ。
もちろん、転移や再発を防ぐためにも、術後の検診は何よりも重要!忘れずに受診して、上手に乳がんと付き合っていきましょう!